エージェントから届いた求人票の年収を見ると、3割低い数字が並ぶ。
でも今の職場では限界が来ている。
自分の能力を発揮できる職場があれば転職したいが、年収が下がってしまったら生活は大丈夫なのだろうか。
私の相談者さんにもそのような方はいらっしゃいます。
転職で年収が3割下がってしまうと、たしかにへこみますよね。
先に結論をお伝えしますと、年収が3割ほど下がるのは、50代では珍しいことではありません。
一方で、同じ条件を見せられて「それでも挑戦したい」とおっしゃる方もいます。
不安を感じていても、何も行動しない人と、前に進む人との差は能力でも運でもありません。
この記事では、50代の転職をみじめだと感じる正体と、みじめと感じない方が持っているものをお話しします。
読み終えるころには、次に何を決めればよいか、はっきりしているはずです。
みじめだと感じるのは気のせい?

みじめだと感じるのは、気のせいではありません。
応募条件は実際に厳しく、50代の多くの方が同じ壁を経験しています。
ただし、その厳しさをどう受け取るかは、人によってかなり違います。
3割減が平均なので気のせいではない
50代で転職すると、年収はほぼ下がります。
かなえが相談を受けてきた範囲では、エージェントから届く案件も、ご自身で探された案件も、下げ幅は3割ほどが平均的です。
2割で済む方もいれば、3割以上減る方もいます。
ですから「思ったより低い」と感じたのは、感覚がおかしいからではありません。
実際に低くなるのです。
ここを認めないと次の話が届きません。
年齢が引っかかると8割が思っている
不安を感じているのは、あなただけではありません。
リクルートとIndeedの「グローバル転職実態調査2023」では、今後の転職活動で制約になると思うことの1位が「年齢に関する制約」でした。

20代では25.6%ですが、40代で59.8%、50代では78.1%に上ります。
感じ方は人によって違う
ただし、この調査には注意点があります。
聞いているのは「年齢に関する制約」という一語だけです。
企業に年齢で切られることなのか、体力が続かないことなのか、分けて聞いていません。
かなえが相談を受けていても、この2つは人によって違います。
「求人票の年齢欄で弾かれる」とおっしゃる方がいます。
「今のペースであと10年は無理だ」とおっしゃる方もいます。
どちらも年齢の制約ですが、打つ手はまったく違います。
あなたのつらさがどちらなのかを、読みながら考えてみてください。
かなえ同じ3割減でも平気な人がいる

年収3割減を見せられても、みじめだと感じない方がいます。
特別な資格や人脈があるわけでもないのですが、共通点が3つありました。
自分を買ってくれる人を見つけている
1つ目は、自分を必要としている相手を見つけていることです。
かなえの相談者にも、年収が3割下がる条件で「自分の能力を買ってくれるなら喜んで挑戦したい」とおっしゃる方がいます。
この方たちは、金額ではなく「自分が求められているかどうか」で判断しています。
同じ金額でも、条件を下げて拾ってもらったのか、必要とされて呼ばれたのかでは、意味がまったく変わります。
求人票の条件と自分の経験がはっきり結びついているなら後者ですね。
▶50代が転職エージェントに断られる理由は以下の記事で詳しく解説しています。

年収=自分の価値と思わない
2つ目は年収を自分の値打ちだと思っていないことです。
提示された金額はあなたの価値ではありません。
その会社がそのポジションにいくら払うかという数字です。
何のために働くか決まっている
3つ目は何のために働くのかが決まっていることです。
かなえの相談者に共通しているのは「働けるうちに働いておきたい」という気持ちでした。
早期退職で退職金を上乗せされ、当面のお金には困っていない方もいます。
それでも働きたいとおっしゃいます。
働く目的が決まっていると、条件は目的を果たすための手段になります。
目的が決まっていないと、年収といった条件がそのまま自分への評価になります。
ここがみじめになるかどうかの分かれ目です。
かなえなぜ年収が3割も下がるのか

では、なぜ3割も下がるのでしょうか。
けっしてあなたの能力が3割落ちたからではありません。
金額の決まり方が、社内と社外でまったく違うからです。
払うのは企業で金額は市場が決める
転職の年収は、あなたと企業の間だけで決まっているわけではありません。
エージェントを使うとき、あなたは1円も払いません。
払うのは採用する企業です。
リクルートエージェントは企業向けのページで、こう説明しています。
料率は、採用する人材の理論年収(採用された人が1年間に得る総額の概算値)の最大50%まで設定できますが、35%の設定が一般的です。
リクルートエージェント「人材紹介の手数料の相場はどれくらい?」企業向けページ
つまり企業は、あなたの年収に加えて3割超の手数料を払う計算になります。
提示額は、その総額の枠から逆算された数字です。
社内の評価は外では通用しない
今の年収には、勤続年数が乗っています。
28年勤めた今の給料は、28年分の積み上げです。
ところが求人票に書いてあるのは、そのポジションの相場です。
積み上げの分は、所属している会社の外に出た瞬間に外れます。
下がったのは評価ではありません。
計算の土台が変わっただけです。

3割減はあなただけではない
年収3割減は、あなた個人の事情ではありません。
かなえが見てきた範囲では、経歴や職種にかかわらず、3割前後という水準は共通しています。
むしろ、そこから大きく外れたときのほうが、理由を確かめる価値があります。
極端に低ければ、募集の枠に合っていない可能性があります。
極端に高ければ、求められる役割が重い可能性があります。
金額はあなたの値打ちではなく、募集枠の大きさと考えましょう。
50代は本当に年収が下がる一方なのか

年収は下がるものだという前提そのものが、10年で変わってきています。
上がった人は10年で15.6→27.4%
年収が下がる人ばかりではありません。
リクルートの2024年9月30日の発表によると、40代・50代で前職より賃金が1割以上増えた転職者の割合は、2014年度の15.6%から2023年度で27.4%になりました。

10年で11.8ポイントの増加です。
4人に1人以上が、転職して給料を上げている計算になります。
転職で収入が増えた割合は控えめな事実
しかも、この27.4%は控えめな数字です。
リクルート自身が、リリースにこう注記しています。
前職(転職前)の賃金は時間外労働等の「変動する割増賃金」を含む一方、転職後の賃金にはそれらが含まれないため、「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者数の割合」は実態よりも低めの値となる傾向があります。
リクルート「ミドル世代の転職動向」2024年9月30日発表
前の会社の残業代は入っていて、次の会社の残業代は入っていないという比べ方です。
実際に上がった方は、これより多いことになります。
50代の転職は10年で6倍に増えた

市場そのものも動いています。
リクルートが2025年3月25日に発表した調査では、ミドル世代(40〜59歳)の転職が10年で約6倍になりました。
40代と50代に分けると、50代の伸びが顕著だとしています。
リリースには「35歳転職限界説は過去のものになっており、企業が求める経験を持っている方を採用する動きが加速している」とあります。
ただしリクルート自身が、自社でミドルシニア支援のプロジェクトが立ち上がったことも要因だと但し書きをつけています。
市場が勝手に変わったというより、企業側が取りに来ているということです。
かなえ
働き方は転職だけじゃない

もうひとつ、お伝えしたいことがあります。
働き方は、正社員として転職するだけではありません。
かなえの相談者は、実際にはもっと幅のある選び方をしています。
一年休んでから戻る人がいる
すぐに次を決めなくても構いません。
1年ほど休養を取ってから、再就職を目指す方がいます。
50代の転職活動は、気持ちの消耗が大きくなりがちです。
消耗したまま面接を受けると、条件をのみやすくなります。
先に休むという選択は、逃げではなく1つの手段なのです。

介護に合わせて時短にする
働く時間を変える方もいます。
親の介護のために、フルタイムから時間短縮に切り替える方がいます。
収入は下がりますが、続けられる形にすることを優先しています。
50代は、自分の都合だけで働き方を決められない時期でもあります。
条件を落としたのではなく、続けられる形を選んだと考えてください。
週三日だけ働く形もある
日数を絞る方もいます。
週3日だけ働き、残りを別のことに充てる形です。
相談者に共通しているのは「働けるうちに働いておきたい」という気持ちでした。
その気持ちを満たす形は、正社員フルタイムだけではありません。
一概に50代はこうだと言えないほど、選び方は分かれています。
まず「どの形なら続けられるか」から考えてみてください。
かなえみじめさから抜けるための方法

最後に、明日からできることをお話しします。
やることは1つ。働く目的を決めることです。
働く目的を先に一つ決める
条件より先に働く目的を1つ決めてください。
生活費のためなのか、社会とのつながりをもちたいなのか、これまでの経験をフルに使い切ることなのか。
どれでも構いません。1つに絞ってください。
目的が決まったら、提示された金額でその目的が果たせているのか判断してみましょう。
決まっていないと、金額がそのまま自分への点数に見えます。
転職で感じるみじめさは、このギャップから生まれます。

年収の下限だけは決めておく
次に譲れない下限を1つだけ決めます。
希望をすべて並べると、紹介できる求人がなくなります。
年収なのか、勤務地なのか、日数なのか、絶対に譲れないものを1つに絞ってください。
残りは幅を持たせます。
先に決めておくと、面談の場で流されずに済みます。
50代転職で条件を下げるべき人・下げなくていい人の判断基準 >
ひとりで決めずに誰かに話してみる
最後に決める前に誰かにアウトプットしてみましょう。
目的を言葉にする作業は、ひとりでやると堂々巡りになりがちです。
転職エージェントは、転職が決まらないとお金が入りません。
ですから「働き方から考え直したい」という段階の方には、時間を割きにくい構造になっています。
家族に話すことも必要ですが、家族は専門家ではないので解決策は期待できません。
一方で、相談そのものを引き受けている場所もあります。
料金を本人が払う形なので、転職しない結論も一緒に考えてもらえます。
40代・50代向けでは、ライフシフトラボなどがあります。

まとめ:50代の転職はみじめかどうかは、年収でなく目的が決める

50代の転職でみじめだと感じるのは、気のせいではありませんでした。
たしかに年収の3割ダウンは一般的な流れです。
次の年収が決まる時に、これまでの勤続年数の積み上げが外れるからです。
ただ、市場も動いています。
給料が上がった転職者は10年で15.6%から27.4%に増え、しかもこの割合は低めに出る計算です。
さらに50代の転職そのものも、10年で大きく増えました。
働き方も、正社員フルタイムだけではありません。
1年休んでから戻る方、時短にする方、週3日にする方がいます。
何のために働くかを決めるだけで、これからの働き方に自信をもって進めるようになります。
かなえ

